D ∩ C

The Intersection of D and C

使えるように理解すること

前回「コンセプトはなんとなくわかる」みたいなことを書いたが、これがヤヴァイことだということがわかってきました。

毎週アドバイザーの先生とミーティングしていると、なんだか1週間でこれしか進めなかったということを隠したいという意識が働くのか、例えば文献の読み込みひとつとっても1時間のミーティングで全部要約してレポートしようと先を急いでしまう。(1週間に一本しかペーパー読めなかったら一年で50本、読むだけで終わっちゃうじゃん、という焦りもある)

でも先生の方はお見通しで、次へ行こうとすると、「ちょっとまって」とそこを詳しく解説してくれたり、「ここはなんでこうなるの?」と質問してくれるのがとても助かる。

で、当たり前のことに気づくのだが、やはり詳細に渡ってなぜこのロジックにこの定式化が成り立つのかとか、なぜこの手法を使ってるのかとか、表面をさらっと舐めてコンセプトだけわかったつもりで先へ進むと、いざ自分がそれを使う段になった時にもう一回全部一から勉強し直さなきゃならなくなる恐ろしい未来が見えて、もう最初は赤子のハイハイ状態でもいいからちゃんと理解してから前に進もうと思い直した。これを今我慢してやればきっとだんだん方法論のバリエーションに出くわしても理解できる速度が上がってくるに違いない(と信じるしかない)。

私の研究では概念とか、単語とかの「類似度」というのを定量的に図る(コンピュータが処理できる数値に置き換える)というのがキーなのだけれど、そこで行列とか、ベクトル空間モデルとか、集合の概念を避けて通れない。

今読んでいる論文で、集合同士の類似度を計測する方法が色々出てくるのだが、 f:id:Ct26ss:20200714131011p:plain

という定式が出てくる。 集合に含まれる要素の中で何割が共通かを見て類似度の指標としている。

高校数学をちゃんとやってきた人には1秒で理解できるなんでもない話なのだが、私の場合、ここでなんで分子に2がかかってるのかが直感的に理解できない。集合の要素数なんて負の値をとることもなかろうに、なんで絶対値にしなきゃいけないのかもピンとこない。"category"じゃなくて、なんで"set"じゃないのかも、論文中には一切解説はない。

で、いろんな解説を見ながらうんうん考えると、これはDice係数(大介数ではない)と呼ばれるとてもありふれた類似度計算式で、2つの集合の平均要素数と共通要素数の割合を表す、とある。なんだ2つの集合の要素の平均を出したいんだから、本当はやりたいのは分子に2をかけることじゃなくて、分母を2で割ることじゃないか、という馬鹿みたいなことに気づく。こんな調子。

こういうのを一つ一つ、焦ってテキトーに流さないようにします。ふーっ!

何のために何をはじめたか

もう一つの非公開ブログの方にアドバイザーの先生とやり取りするための文献紹介やミーティングノートなどを溜めているので、こちらはお気楽に徒然に行きます。

職業はデザイン・コンサルタントです。美大卒の工業デザインバックグランドで、ミッドキャリアでいわゆる「デザインシンキング」系の専攻で修士をとり(ちょっと含みのある書き方ですが、そのうち触れます)、広義のUXデザイン戦略のコンサルをしています。

情報学の後期博士課程で社会人ドクターを目指して4月から勉強を始めました。 あまり競合がいるとは思えないニッチな領域なのですが、研究テーマはあんまり公の場に書かない方が良いんだそうであります。新規性が大事なので。関連研究は Semantic Image Retrieval、Serendipity Recommendation System、  Ontology、Relevance Feedbackなどでしょうか。「AIありき」ではないのですが、結果的にAIと関わることになりそうです。私が元々やっていた 「クラシカルデザイン」領域への貢献になると思っています。

将来的には今の仕事で扱っているアドホックな定性情報を機械判読可能なフォーマットで蓄積し、手作業で作っているユーザモデリングなどももっとコンピュテーショナルにできるようにならないかな、というのが「デザインシンキング」領域への貢献。

ちなみにこの「クラシカルデザイン」「デザインシンキング」という分類はJohn Maeda氏 が3、4年前から言っている「3種類の異なるデザイン」の最初の二つの引用です。これを読んだから、今この3つ目の「コンピュテーショナルデザイン」らしきことを目指し始めたわけではないのですが(当初、これがコンピュテーショナルデザインだという意識がなかった)、結果的には自分のキャリアや継ぎ足してきたスキルがこの「3種類の異なるデザイン」のパス上を動いているのは何か因縁めいている感じがしないでもありません。

ちなみに昔風にいう、「私立文系」が突然この世界に飛び込んだので、ムチャクチャ脳みそに汗かいています。はっきり言って、かなり無茶だと言われています。若い人の数学脳に全然ついていけてませんが、唯一の救いは会社員時代に主成分分析やコンジョイント分析などの多変量解析をいろいろやってみたことでしょうか。おかげで特徴を要約するとか、意味的な距離が近いとか遠いとか、コンセプトはなんとなくわかります。

これから「そんなことも知らんかったのか!」ということをドヤ顔で書くと思います。